研究概要 |
省エネ行動促進のためのコミュニケーション内容と受け手との関係性や,効果的な内容について検討することを目的とし,前年度は家庭用エネルギー診断による短期効果の検討を行った。本年度は,同じ受け手に対してエネルギー診断の実施を繰り返し,その長期効果の検討を行った。その結果,コミュニケーションの効果を質問紙で測定した態度や行動実践度で捉まえると,短期効果と同様に,エネルギー消費量の小さい受け手では,エネルギー診断を繰り返す度に省エネ行動を積極的に取り組む傾向がみられ,このような受け手においては,省エネ行動に対するベネフィット評価が高まっていることが確認された。それに対して消費量の大きい受け手においては,ベネフィット評価が減衰しており,また短期効果では,省エネ行動を負担に思っていること,家族が非協力的であることによるモチベーションの低下がみられたが,これらの阻害要因においては,診断の回数を重ねるごとに軽減している様子が確認された。これに対して,実測したエネルギー消費量でコミュニケーション効果を捉まえると,普段から消費量の大きかった受け手の方が,少しの行動で大きなエネルギー消費削減効果があるために,コミュニケーション効果が高いといえることが明らかになった。これらより,消費量の大きい受け手に対しては,ベネフィット評価を維持し,長期的なコミュニケーションを積極的に実施していくことが重要であることが示された。 なお本研究課題名にもあるように,エネルギーモニタリングシステムを利用し,エネルギー消費量のフィードバックをリアルタイムで実施して,コミュニケーション内容や方法についての検討を計画していた。しかし,前年度確保したフィールドにおいて,東日本大震災の影響が大きく,リアルタイムでのフィードバックが実施困難となったため,家庭用エネルギー診断の継続およびインターネット調査による検討方法に変更している。
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