研究課題/領域番号 |
22730332
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 剛 一橋大学, 大学院・商学研究科, 准教授 (70323912)
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キーワード | マンガ / 文化製品 / 文化社会学 / 国際マーケティング / スティグマ / 大衆文化 / クール・ジャパン |
研究概要 |
本研究の目的は、日本で独特な形で発達した文化製品(cultural product)であるマンガが、アメリカという異なる文化圏で人気を博した理由を実証的に明らかにすることにある。基本的な問いは、文化ギャップを超えて文化製品が定着するメカニズムはどのようなものか、というものである。具体的には、(1)1980年代のアメリカにおけるマンガ出版の歴史調査、(2)作品データベースによる出版社の行動分析、(3)日本の中央官庁による輸出振興・文化外交の影響に関する調査、(4)英訳マンガの内容分析、(5)日本の出版社のライセンス提供に関する調査の5つ課題に取り組む。 平成23年度は、上記の課題のうち特に(1)と(2)と(5)に力点を置いた。8月にサンフランシスコに、9,月にニューヨークに赴いて、現地出版社(ビスメディア、講談社USA、バーティカル、エンプレス)や関連雑誌編集長(『Otaku in USA』)、ベテラン翻訳家3名に対してインタビューを行い、(1)北米マンガ業界の歴史的経緯と(5)日本の出版社との関係について伺った。その上で、インタビューデータを(2)で得られた出版行動と照らし合わせることで、同業界の発展のダイナミクスを明らかにする作業を進めた。また(4)英訳の際にどのような「アダプテーション」と呼ばれる作品の改変が行われてきたのかについても編集者や翻訳家から情報を提供してもらった。 またニューヨーク出張にあわせて、(3)日本の中央官庁による「クール・ジャパン」政策に関する調査成果について、文化政策に関する研究拠点であるプリンストン大学Center for Arts and Cultural Policy Studiesのセミナーにて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の最大の成果は、当初の計画以上に、現地出版社や翻訳家へのインタビューを実施できたことである。これまで構築したネットワークを利用して、主要な出版社はほぼ網羅し、さらに業界でも人と会わないことで知られている翻訳家に業界の古い歴史について話を聞くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで翻訳マンガを出版する北米の現地出版社へのインタビュー調査を数多く行ってきた。一方、ライセンスを提供する側である日本の出版社が、北米マンガ市場をどのように見ており、どのように現地出版社からのアプローチに対応してきたのかもまた調査する必要がある。そのために日本の出版社に対してインタビューを平成23年度と24年度にかけて実施する計画であったが、編集者へのネットワーク作りは始めているものの、正式なインタビューに着手していない状況である。平成24年度は、これまで構築したネットワークを活用して、英訳マンガのライセンスを多く提供してきた講談社、角川書店、小学館、集英社、メディアワークスなどにインタビューを実施する予定である。
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