本研究の目的は、日本の非耐久消費財企業を対象にグローバル・ブランド管理における本社・子会社間の知識移転を実証的に明らかにすることである。平成22年-24年度の3年間で研究対象企業に対してインタビュー調査を行い、グローバル・ブランド管理における知識移転を知識の開発・共有・活用の視点から明らかにする。 平成22年度の研究計画は、グローバル・ブランドの管理に関する文献の追加収集と分析枠組みの再検討に着手し、8月以降は日本多国籍企業本社のグローバル・ブランド管理担当者・組織に対して継続的にインタビュー調査を行うことであった。そこで、スポーツ用品企業を対象にインタビュー調査をした。日本企業のグローバル・ブランド管理における知識移転の特徴を示すために、欧米企業へのインタビューも実施した。 調査の結果、グローバル・ブランド管理における知識移転が、本社から子会社へ移転されるだけでなく、子会社から本社へ、さらに子会社間同士で移転されていることが明らかになった。また、どのマーケティング・プログラムを移転しているのか、そしてどこへ移転されるかについては、当該企業の戦略(企業要因)、移転先市場が抱える問題(市場要因)が大きく影響を与えていることも分かった。こうしたことから、グローバル・ブランド管理における知識移転は、当該企業の国際マーケティング発展段階に依存するという仮説がたてられた。グローバル競争が激化し、PLCが短縮している現在、知識移転は、迅速な意思決定、グローバル・シナジー効果に大きく寄与し、多国籍企業のグローバルな競争優位獲得において極めて重要な役割を果てしていることも明らかになった。
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