研究概要 |
本年度は,文献調査としては,まず前年度に引き続き,消費者の廃棄・処分行動に関する研究のレビューを進めた。前年度検討した枠組み変える文献は発見されなかったが,消費者の廃棄・処分行動に関するレビューを充実させることができた。また,本年度は,実施計画でも触れたとおり,消費者の倫理的意識に関する研究のレビューに着手した。レビューは欧米のジャーナルを中心にすすめ,その数は少なかったものの,本研究のテーマである消費者のアイデンティティ形成意識との関連で進められている研究が明らかになった。この成果は次年度,消費者の倫理的意識に関わるレビュー論文として公表したいと考えている。一方で,本研究のもう一つのテーマである消費者の廃棄・処分行動との関わりとが論じられた研究は無く,次年度以降,さらなる文献研究と実証研究とを進めていきたいと考えている。 調査としては,9月に消費者の処分行動,アイデンティティ,倫理的意識,倹約志向の側面から設問を構成した質問紙調査を行った。現在,分析をすすめており,次年度以降,研究成果として論文発表および学会発表を行う予定である。 研究成果の発表としては,まず論文発表として,消費者の廃棄・処分行動に関するレビューをまとめた上で,処分行動の意思決定がアイデンティティ形成意識のあり方によってことなることを実証した研究を発表した。学会発表としては,これまで研究してきた,消費者の所有物に対する人生経験の投影という行為と上記の論文をもとにした内容を踏まえた内容の報告を行った。また,以前から取り組んできた分担執筆の書籍を本年度出版することとなったが,その内容について,消費者とマーケティングとの関わりとの中で本研究の成果を踏まえた記述を追記した。さらに,現在,消費者の廃棄・処分過程におけるコミュニティへの参加について論じた論文を執筆しており,次年度に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査,実証研究,双方の調査を当初の予定・目的通り実施できたと考えている。一方で,研究成果の発表について,論文としてまとめることのできるデータが残されており,次年度においては着実に研究成果をまとめる作業を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,最終年度となるため,2年間の文献調査・質問紙調査の結果をまとめることに注力したい。一方で,今年度の成果として,消費者の倫理的意識に関して本研究のテーマであるアイデンティティと大きな関連性をもつこと,また消費者の倫理的意識それ自体も,今日的に重要なテーマであるという知見が得られたことがあげられる。こうしたことから,消費者の倫理的意識それ自体に関する文献調査と,消費者の倫理的意識と廃棄・処分行動という視点から見た質問紙調査なども視野に入れた研究を進めていきたい。
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