本研究の狙いは退職給付会計情報に対する評価の国際比較を行うことにある。退職給付会計制度は、単に会計制度の問題のみではなく、各国の金融システムや雇用システムと大きくかかわる重要なテーマである。にもかかわらず、これまで我が国と他国との退職給付会計情報の質や特徴をきちんと分析・評価した研究がほとんど蓄積されてこなかった。こうした研究を実践するため、研究初年度にあたる平成22年度においては、大きく以下の4点を行った。 (1)日本の退職給付会計情報の質と特徴が日本の会計システムや企業システムに与える影響についての分析を英文論文としてまとめ海外学会でレビューをうけた後に、発表の機会を獲得し、発表を行ったほか、英文ジャーナルに投稿のため、現在準備を進めている。海外に当該成果を発信することで、各国研究者に日本における退職給付会計情報の質や特徴の理解を促し、グローバルな研究ネットワーク構築に資する可能性があると考えている。 (2)海外および国内における退職給付会計の情報データのうち、特に日本とアメリカのデータベースについて整理を一行った。 (3)現在、IASBおよび日本でも退職給付会計制度の変革(特に数理計算上の差異など未認識項目を損益計算書に反映させる動き)が進展している。本研究プロジェクトでは、日本および海外における退職給付会計制度の動向についてレビューを行った。 (4)退職給付会計およびそれに関連する会計情報の評価についての国際比較について検討を行った。 前述したとおり、退職給付会計情報には、各国の会計制度のみではなく、金融システムや雇用システムなども深く関連していることが研究の結果、明らかになりつつある。こうした点について、研究最終年度にあたる平成23年度に論文としてまとめ、発表を行っていく予定である。
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