本研究の課題は,非上場企業の利益調整行動を上場企業と比較することによって,非上場企業の利益調整の特徴を検出することであった。税コストと金融機関との結びつきの強さが,利益調整を誘引する(しない)主要な要因となるという仮説を設け,その実証分析を実施する。具体的な研究プロセスとしては,(1)先行研究の検討,(2)調査方法の設定,(3)実証分析の実施,(4)ワーキング・ペーパーの作成と学会発表,および(5)ジャーナルへの投稿という手順を設定した。 前年度までに,当初の計画通り,(1)から(3)までの手順は終了している。(3)の実証分析では,(a)税コストが高い企業ほど,税コストを削減するためにわずかな利益を計上する,(b)金融機関との結びつきが強い企業ほど損失を回避する,という利益調整を実施することがわかった。これらの結果は,我々の仮説を支持するものであった。最終年度となる本年度は,(4)の手順にしたがってワーキング・ペーパーを執筆し,その成果は「The Effect of Institutional Factors on Discontinuities in Earnings Distribution: Public Versus Private Firms in Japan」として公表した。これはSSRN(http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2069698)よりダウンロード可能となっている。また論文のブラッシュ・アップを図るため,ニューヨーク大学とイエール大学を訪れ,当該研究の専門家から貴重なコメントをもらった。現在は,会計研究のトップ・ジャーナルに投稿を済ませており,(5)の手順まで完了している。
|