今年度は、主に、決算発表後ドリフトとアクルーアルアノマリーの関係についてさらに検討し、検証すべき仮説の構築に取り組んだ。具体的には、Bernard and Thomas(1989)(1990)、Sloan(1996)、Collins and Hribar(2000)、Xie(2001)、DeFond and Park(2001)、Cohen et al.(2002)、Shivakumar(2006)、Hribar and Collins(2002)等の文献を材料として検討を進めた。Collins and Hribar(2000)によれば、アクルーアルの水準と利益サプライズが逆方向である場合には利益発表後ドリフトが増加し、同一の方向である場合には減少する。つまり、二つのアノマリーの相乗効果により市場のミスプライシングが極端になるということである。このとき、Xie(2001)の分析結果を踏まえれば、アクルーアルを裁量的アクルーアルに置き換えても理解することができる。さらに、アクルーアルを主因とする利益よりも営業活動によるキャッシュ・フロー(CFO)を主因とする利益の方が持続性が高いことから、アクルーアルに基づく同一のポートフォリオに属するサンプルについて、利益発表後ドリフトとCFO発表後ドリフトとの間に相違がみられるはずである。しかもその相違は、非裁量的アクルーアルの推定モデルにCFO変数を含めるか否かで変化する可能性がある。このように、先行研究の検討及びそれに関する考察を通じて以上の仮説を整理するに至ったものである。
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