本研究の目的は、経営者の業績予想の特性を分析するとともに、業績予想の特性によりアナリストや市場関係者の反応が異なるかどうかを実証的に明らかにすることにある。 当該研究の期間中である2012年3月決算期以降から、業績予想制度が変更されることになった。具体的には、業績予想を従来の「表形式」で表示する様式化、「自由記載形式」の様式のいずれかを選択でき、「表形式」を選択する場合も、自社の実情に照らして、開示項目、開示期間、開示形式を自由に選択できるようになった。また、通期および第2四半期累計期間にポイント予想を開示するといった原則的な取扱いと、それ以外の例外的な取扱いの区分を廃止し、取引所への事前相談や業績予想を開示しない理由の記載が廃止された。今回の制度変更は、兜倶楽部の要請で業績予想が開示されて以来、最も大きな変更であったため、この制度変更の影響の分析も同時に行うことを試みた。 分析の結果、期初予想には経営者のクセが反映されていること、そのクセを市場関係者やアナリストは完全には読み取れず、株価や利益予測に十分に反映していないことが判明した。とはいえ、市場関係者やアナリストは精度の低い業績予想をある程度は把握しており、業績予想の精度に応じて、株価や利益予想の修正幅を変えていることも明らかになった。 また制度変更後に開示された業績予想は、初年度ということで、様子見の様相を呈しており、従来とそれほど変化が見られなかった。2年目の2013年3月期は少し変化が見られるかもしれないため、引き続き、業績予想の開示行動を観察する予定である。そして、変更後のデータがある程度揃った段階で、主に変化させた企業を対象に、その理由や影響などの実証分析を行う予定である。
|