本研究の目的は、管理会計論およびマネジメントコントロール論の観点から、IT組織特有の業績評価システムのあり方について検討し、業績評価システムの構築によるIT組織の組織変容について考察を行うことである。本年度は文献調査と訪問調査を通じて、下記の項目について次のような成果を得た。 1 IT組織の特性に関わる知見の整理 主に文献調査を通じて、IT組織の特性を抽出することを目標とし、既存のIT関係文献を含めた経営関係およびマネジメントコントロールに関する管理会計など文献について国内外の書籍を調査した。この成果として、論文「コーポレート・レピュテーションに影響を与える情報資産の諸相」としてまとめることができた。 2 IT組織の業績評価システムに関する課題や問題点の明確な把握 IT組織のための業績評価システムにおける課題を抽出することを目標とし、文献調査および訪問調査を行った。ITベンダーの協力を得て、企業経営者などにIT組織の特性についてヒヤリング調査を行うことができた。この成果として論文「IT組織を戦略志向へ変革させるためのマネジメントシステム」のなかで抽出した課題などについて提示することができた。 3 アンケート設計の基礎づくり(仮説の設定) 上記から得られた知見のもとに、アンケート設計の基礎作りを目標にして、業績評価が組織に与える影響についてケースをもって研究を行った。その成果として「非関連多角化事業会社におけるEVA評価のあり方」、「The Impact of J-Cost Theory and Material Flow Cost Accounting on Manufacturing Businesses」を発表できた。今後はこれらの知見をもとにIT組織に適用できるような形でアンケート設計を進める。
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