研究課題
最終年度である本年度は、先行研究の再検討を踏まえて、多くの企業へのヒアリング調査を中心に研究活動を行った。まず、前々年度から引き続きイトーヨーカ堂株式会社への調査を継続しており、とくに本年度は商品の企画・開発プロセスに焦点を当てている。同社の商品企画・開発プロセスでは、製造業にみられる原価企画と同様のマネジメントプロセスが実施されており、その担当者であるマーチャンダイザー(MD)が重要な役割を担っている。MDは、商品別の企画設計から、調達、販売に至るまでのバリューチェーン全体における権限と責任を有しており、商品別損益計算システムと単品管理システムを用いて常に販売動向をモニタリングしている。同社の社是が基軸となり、商品別の視点と地域別・店舗別の視点が販売の現場で見事に調和している点が興味深い。その他にも、株式会社東芝との共同研究を実施している。日本原価計算研究学会産学連携コストフォーラムを通じて、同社財務部と共同研究体制を構築することができ、同社が抱える経営課題と取り組みについて、理論的・実務的視点から検討した。医療機器、社会インフラ設備、半導体その他、非常に多種多様な製品を抱えている同社は、販売チャネル別・製品種類別に詳細にバリューチェーンを識別し、「スルー損益」と呼ばれる損益計算システムを構築している。「スルー損益」は、同社において学習と創造の管理会計システムとして機能しており、次の特徴を有している:詳細に設定されたバリューチェーン別に一気通貫して経営上の問題を可視化するとともに、本社-カンパニー-事業部・工場間でベクトルを合わせて意思決定の統一化を図り、全体最適の実現を志向している。以上、本年度は、ヒアリング調査等に基づいて、会計システムを通じて企業全体が1つの方向を向くように腐心した会計担当者と会計システム設計者が果たした役割を明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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The 36th Annual Congress of the European Accounting Association, Paris 2013
巻: EAA in 2013 ページ: 全19頁
會計
巻: 181(5) ページ: 115-127
産業経理
巻: 72(2) ページ: 74-85