本研究は、総合的利益管理としての原価企画のあるべき姿を、イノベーション・マネジメントにおける戦略コントロール・システムとして想定し、これを解明することを最終目的としている。 平成24 年度は、前年度の研究成果から得られた本研究における分析枠組みである、「環境探査、前提コントロールおよび実行コントロールの3つから構成される戦略コントロール概念に基づき、創出を意図するイノベーションの類型(イノベーション戦略=製品開発戦略)に従って3つの構成要素の内容を組み合わせることで、タイプの異なる戦略コントロール・システム(イノベーション戦略実行システム=原価企画システム)を概念化することができる」との仮説を、実証的に調査研究することに取り組んだ。 第1に、探索的な調査として、「一般機械器具製造業」「電気機械器具製造業」「情報通信機械器具製造業」「電子部品・デバイス製造業」「輸送機械器具製造業」「精密機械器具製造業」に属する主要企業5社6事業所の経理部門及び開発部門の責任者を対象に半構造化インタビュー調査及び事例研究を実施した。その結果、業種によって製品開発環境が異なり、それによって開発する製品の特性(製品開発戦略)も異なること、さらに開発製品の特性により製品開発及びその管理方法に違いが見られることが明らかとなった。また、イノベーションを必要とする企業ほど、従来の狭義さらには広義の原価企画をも超えて、「事業企画」とも呼べるような広範囲に及ぶ「総合的事業利益管理」の取組みが実施されているとの示唆を得た。 第2に、事例研究の結果も踏まえ、上記産業に属する企業の製品開発プロジェクト・チームメンバー経験者を対象に、新製品開発体制に関するWeb調査を実施した。そのクロス集計結果からは概ね仮説が支持される傾向が窺える。しかしながら、いまだ詳細な分析にまでは至っておらず、今後の研究課題として残された。
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