京セラアメーバ経営を調査対象として、これまで行ってきた調査を継続し、またその成果を本にまとめ、出版した。 アメーバ経営は多くの研究者から注目されてきた手法であるが、必ずしもその歴史的な位置づけは明確ではなかった。そこで、本研究においては、アメリカにおける管理会計の発展を、計算技法の精緻化・高度化とし、アメーバ経営を含めた日本における管理会計の発展のあり方を、「ユビキタス化」とした。その具体的な事例としてアメーバ経営における管理会計実践を位置付けることで、アメーバ経営における管理会計実践の、管理会計研究における意味を明確にしたことが、当年度の研究成果の最大の特徴と言える。 また分析に当たっては、欧州を中心とした定性研究の理論的基礎として一定の評価を得ている「アクターネットワーク理論」を応用していることから、国内にとどまらず、国際的な学術コミュニティーのなかで、議論をさらに発展させうる。トヨタをはじめ日本的な経営や管理会計はこれまでも多くの関心を国際的に集めてきたが、それらは日本における「特殊」な管理会計実践として扱われることが多かった。今後は、アメーバ経営をはじめとした日本における管理会計実践を国際的な文脈で議論し、より多くの、かつ幅広い視点から理論的な分析を行う必要があるとともに、本研究における成果は、そのための土台となりうるものであると考えられる。 一方、本研究は「管理会計」の文脈にある程度制限されている。しかしながら管理会計システムはその他の経営システム(たとえば人事システム)などとも関連しながら実践されているものである。今後はそれらとの関連を踏まえながら、より大きな視点から分析を行うことも必要であると考えられる。
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