本研究では、国際財務報告基準(IFRS)とのコンバージェンスおよびアドプションとそれによる影響、ならびに個別のトピックスとして業績報告について次の4つの課題を検討した。第一に、包括利益情報が投資家に有用であるかどうかを利益発表後の株価のドリフト(PEAD)に着目し、分析を行った。第二に、包括利益の算定に影響を及ぼす公正価値について、景気循環増幅効果をもたらすかどうかを検討した。第三に、国際会計基準審議会(IASB)と米国の財務会計基準審議会(FASB)でこれまで検討されてきている業績表示について、その論点を明らかにした。最後に、IFRSの導入が及ぼす影響を企業はどのようにとらえているのかについて、日本と韓国の上場企業に対してアンケート調査を行い、その結果を分析した。これらの4つの分析結果は、IFRSのアドプションによって、必ずしも投資家や企業にプラスの効果をもたらすとは期待されないことを示唆するものである。
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