平成24年度は次の3点について調査を実施し研究を進めた。1つ目は、平成23年度に引き続き、森林・林業における環境会計の枠組みを検討して、ストックとフローの総合的なマネジメントを特徴とする森林会計をモデル化した。具体的には、国有林野事業がかつて採用していた蓄積経理方式と、林業公社会計基準等を、持続可能な森林管理や保続性原則の観点から検討して、森林会計の特徴を明らかにした。この特徴に基づく形で、平成23年度から継続して調査し整理している未利用バイオマスの利活用や、森林が生み出すサービスの推計等を取り入れる形で、森林会計をモデル化した。 2つ目の調査として、森林所有者や森林組合等の事業者における立木資産の会計・簿記を調査し整理し、経営改善の観点から課題を明らかにした。具体的には、株式会社や個人事業主等の形態別にいくつかの事業者を取り上げて、担当者に対するヒアリング調査を行った。そして、いずれの事業者の会計・簿記も、立木原価として集計する作業や経費の範囲、売上原価の決定等が税法の規定に従うだけで、経営改善に役立つ情報を十分に提供できていないことを明らかにした。 3つ目の調査として、これまでに調査した事業者のいくつかに対して、モデル化した原価計算・環境会計を持っていき、事業者の経営改善という観点からモデルが適切かを調査した。この調査によって、サプライチェーン・マネジメントや地域の関連事業者との連携が課題となることを明らかにした。 以上の研究を通じて、森林会計の基礎的な枠組みをモデル化できたこと、本研究がモデル化した(伐採・搬出を中心とする)原価計算及び森林会計を事業者が利活用することによる経営改善の可能性を明らかにできたこと、また、メゾ環境会計というモデル拡張の方向性を明確にできたことは、平成24年度の大きな成果である。
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