研究概要 |
本研究の目的は、日本における機会の平等/不平等を、世代間所得移動の推定によって測定し、国際比較の観点からその水準を評価することである。平成22年度の研究計画は、国際比較のための準備として、(1)世代間所得移動と所得格差に関する文献研究と(2)日本のデータを用いた分析を行うことであった。(1)については、1990年代以降、急速に研究蓄積の進む欧米諸国における世代間所得移動の実証研究をかなりの程度蓄積することができた。比較的新しい研究領域であるため、各国で用いられている調査データ、所得移動の推定方法は必ずしも標準化されておらず、得られた知見の比較には慎重であることが改めて確認された。また、所得格差についてはOECDの公開データを収集することに加えて、ルクセンブルク所得研究(LIS)データの個票分析に着手した。(2)については、国際比較可能なEGP(Erikson,Goldthorpe and Portcarelo)階級分類を所得関数の推定に用いることで再分析した。分析結果については、(1)の成果の一部とあわせて共同研究者とともに論文にまとめ、現在投稿中である。それとは別に、日本における世代間所得移動に関する論文を、2005年SSM調査の研究成果出版企画に寄稿した(平成23年に出版予定)。日本についてはさらに世代内所得移動の分析を行った。これは、間接的に得られる世代間移動だけでなく、直接測定可能な移動について明らかにする必要があったためである。分析にはパネル調査である東京大学社会科学研究所「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」を使用し、分析結果は日本社会学会、パネル調査カンファレンスで報告し、ディスカッションペーパーをWeb上に公開している。
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