最終年度である2011年度は、初年度(2010年)に行った調査および収集した史資料の分析と結果の公表を主たる課題とした。具体的には、ベテラン歯科衛生士(歯科衛生士の指導者層)を対象としたインタビュー調査と、国会会議録や歯科学雑誌などの文献・資料調査から得られた結果を分析し、戦後日本における歯科衛生士の専門職化過程を、歯科医師や歯科技工士、歯科助手等関連する職種との関係性においてとらえた。同時に、初年度に引き続き、国内外のプロフェッション論の理論研究を行った。これらを統合した研究成果を、日本教育社会学会において報告した。さらに日本保健医療社会学会の学会誌に論文を投稿し、査読を経て掲載が決定された。またイギリスのウェルカム財団(the Wellcome Trust)のニューズレターに掲載された近代日本の医学史特集号に、本研究の目的と意義を紹介した。 専門職・ヘルスワーカー間の構造的関係性という枠組みを用いて専門職化を論じた研究成果は国内にはほとんどなく、本研究は既存の日本の医療専門職研究に対して新たな視点を提示し得たといえる。 当初の研究実施計画に照らすと、ほぼ計画通りに研究を進行させることができたが、幼稚園・小学校を対象とした口腔啓蒙教育の参与観察については実施することができていない。この点については引き続き調査協力先の確保につとめ、調査を継続させていく予定である。他方、調査研究を進めるなかで、近年の高齢者福祉の現場において口腔ケアの重要性が高まっていること、歯科医師や歯科衛生士に限定されない新たな口腔ケアの担い手が生み出されていることが明らかとなった。そのため、高齢者介護の現場で口腔ケアに携わるケアワーカーや医療専門職を対象にしたアンケート調査(WEB調査)を実施し(2012年1月)、高齢者介護現場における口腔ケアの担い手による業務の協働・連携をめぐる実態を把握しようと試みた。本調査結果は現在分析中であり、2012年度内の公表を目指している。
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