研究概要 |
平成23年度中の研究代表者による成果は以下のとおりである。 1.学会報告 (1)「開発社会学と『慢性的貧困』-近年の研究動向と課題」、第22回国際開発学会全国大会、於名古屋大学、ll月27日。 (2)"Participatory Research and Its Social Repercussions: Transnationalisation of Field-Work,NGOs and the Politics of Accommodation in India's Urban Slums",37th All-India Sociological Conference,Jawaharlal Nehru University,New Delhi,13 December.(なお、同日に「経済・社会・政治体制」部会にて司会を務めた) 前者は途上国の貧困削減に関する政策や研究で照準とされてきた社会関係資本が、貧困層間の不平等を深化させる可能性がある点を、権力の理論をてがかりに論じた。そのうえで、現地社会への「介入行為」としての開発がもたらす「意図せざる結果」を分析するうえでの社会学理論の有用性を提示した。 後者は当事者参加型調査が内包する権力性を検討した。研究者による自己省察(reflexivity)を掲げる同手法は、途上国のNGOによる資金調達、そして先進国の研究者が競争的資金を獲得する際に自らの「調査倫理」を正当化させる手段として機能する。研究代表者はインドでの調査経験をもとに以上を例証し、調査への参加を通じて住民が調査の権力性を告発し、自らの権利を主張するようになった過程も描出した。 2.現地調査 研究代表者は2-3月にインド、アーメダバード市のスラム7地区にて質問紙調査を実施し、その延長線上で参与観察や住民への聞き取りも行った。おもな知見は、(1)過去にコミュニティ開発を実施したNGOが意図した住民自身による「持続的な自助組織化」はみられなかった一方で、政党と一部住民とのあいだに庇護-追従関係が築かれた点、(2)こうした関係がスラム内の不平等な社会秩序を再生産しでいる点である↓
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