研究課題
本研究はインド、グジャラート州アーメダバード市を対象に、スラム住民のあいだでの階層化、生活機会へのアクセスをめぐる不平等、生活様式の変化と政治的態度の変容を実証的に検討した。同市は「活力あるグジャラート州」の拠点として位置づけられ、インフラの敷設や企業誘致を中心に中産階級向けの都市再開発が官民連携で進行中である。この都市経済とガバナンスの再編は、一部のスラム住民の社会的上昇に寄与しているが、他方ではインフォーマル部門の膨張やスラムの強制移転が進行している。本研究では市内7スラム地区を選定し、グループ・インタヴュー、質問紙調査、参与観察などを通じて新自由主義的な都市開発の推進主体たる州政権や市当局に対する住民意識のみならず、生存維持をめぐり住民たちが採る戦略を検証した。知見は次のとおりである。第1に、自営業や小売業など生産手段を有する住民や、子世代がフォーマル部門に就業した世帯では消費の志向性に変化がみられた。第2に、こうした層には上・中位カーストでかつ中産階級の利害を代弁してきたヒンドゥー右派の現州政権を支持する住民が少なからずみられた。第3に、ムスリム集住地区や都市開発や経済政策の恩恵に供さない住民層は、おおむね現州政権の開発路線に対しては懐疑的である傾向が強い。第4に、与党・野党双方が票田の確立を目的に一部住民と庇護-随従関係を築いていることも確認した。同市は貧困女性を集合的に動員し、労働者としての権利や居住権などを行政に求めてきた社会運動の歴史をもつ。しかしながら、ヒンドゥー原理主義を党是とする政党が開発主義を掲げるなかで醸成されてきた新しい都市の政治文化に対して、こうした運動が多文化共生や貧困層の社会的包摂を争点とした集合行為を紡ぎだせないのが現状である。本研究はその構造的な背景を、スラムで生起しつつある住民間の階層化と複合的な文化的・政治的意識に求めた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Contention: The Multidisciplinary Journal of Social Protest
巻: Vol. 0, Iss. 0 ページ: 159-160
Isabella Paoletti, Maria Isabel Tomas and Fernanda Mendes (eds.) Practices of Ethics: An Empirical Approach to Ethics in Social Sciences Research (図書所収論文)
巻: - ページ: Chapter 9
国際開発研究
巻: 第21巻1・2号 ページ: 11-29
巻: 第21巻1・2号 ページ: 31-45
一橋大学国際教育センター紀要
巻: 第3号 ページ: 29-52