本研究は、社会学のエスノメソドロジーの方法論に基づき、授業の学習経験や教授知識を授業の相互行為上で組織化されるものとして分析する。本研究で明らかにするのは(1)様々な形態の学習活動における、学習経験・教授知識の組織化のあり方(2)学習集団に共有された慣習や人間関係が教育実践の設計において持つ意味(3)教師の授業づくりの困難さの改善に資する知見、の3点である。具体的には、教育実践の設計に関わる相互行為上の諸資源(学習集団に共有された慣習や人間関係)を明らかにしそれらが教育実践の設計と実施にどのように関わっていることで授業づくりの困難性がどのように生じるのか、その改善の可能性について明らかにする。さらにこれらの作業を通じて、社会学の相互行為分析の方法論を授業研究の方法論として洗練させる。22年度は、学習者同士の交流や多様な形態の学習活動を含んだ教育実践のデータの収集・整理を行なった。具体的には、自然と触れあう体験的学習活動(7~8月)、学校間の交流を含む博物館における体験学習活動(10月)、研究連携している小・中学校における学習者の主体性を重視した様々な形態の学習活動のビデオデータを収集した(5月~7月、10~11月不定期)。それらのデータを、動画ソフトで整理・電子データ化し、個人情報を排除し転記して相互行為分析のためのデータを作成した。また、授業者が実践を省察する力を向上させるための授業ビデオデータの利用方法について、日本科学教育学会研究会のシンポジウムで研究報告し(5月)、論文を発表した(23年3月)。
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