「平成の大合併」後のローカルガバナンス、とくに編入合併された地域における新たな地域自治の実態は、現在のところ各地で多様な展開がみられることが報告されているものの、その特性が十分に明らかにされているとはいいがたい。とりわけ、既存の地域住民組織である町内会・自治会等が、新しい住民組織であるNPOなどとどのように分業・協業がおこなわれているのか、というあたりは、今なお大きな課題として残されていると思われる。 そこで本研究では、主たる事例地域として静岡県浜松市に注目し、また比較対照事例として、浜松市と同様に「平成の大合併」のなかで多数の市町村が合併して旧市町村ごとに「地域自治区」が設置された新潟県上越市を中心に、現地調査をおこなってきた。 これまでの本研究では、「大合併」後のローカルガバナンスにおいて、地域自治区制度が一定程度有効性をもって機能しはじめていること、またそのための諸条件を明らかにしてきた。浜松市でも上越市でも、合併後のローカルガバナンスを担う組織として、地域自治区の事務所・地域協議会に加えて、新しい住民組織が設立されている地域がみられる。また、これらと既存の町内会・自治会等の連繋や協力が模索されているところも少なくないことが明らかになった。 さらに、これは本研究の知見のひとつであるが、合併後のローカルガバナンスが機能するうえで、地域協議会や新しい住民組織だけでなく、既存の地域住民組織が、公共サービスの供給においても、公共的な意思決定においても、さらには新たなガバナンスのシステムそのものの正統性を確保するうえでも、重要な役割をもっていることが明らかになった。 最終年度にあたる本年度は、補足調査を実施するとともに、以上の知見を中心に、研究書2冊に論文を1本ずつ執筆した(いずれも印刷中)。また学会発表をおこない、これについては、現在論文化を進めているところである。
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