研究概要 |
本研究は、戦後日本社会における地域の「伝統」芸能の(再)編成,そして地域の社会構造の変化を、民謡・芸能の担い手と,芸能に対して大きな影響を及ぼす諸エージェント(具体的には文化財行政・観光産業・地方新聞社・放送局・民謡及び民俗芸能研究者・商工会や青年会議所・保存会・研究者・NGOなど)が取り結ぶ関係性とその変容の分析を通じて明らかにすることを目的としている。 平成22年度は、戦後,とりわけ各地の民謡ブームが起こる昭和30年代以降を対象として,民謡や芸能を取り巻く社会的基盤と,それらと結びついた様々な文化的エージェント(例えば商工会・観光協会・行政・地方新聞社などの地域メディア・保存会・地方自治体・各地域の自治会等)が地域社会において織りなす関係性を中心とした歴史社会学的分析を行った。具体的には、滋賀県各地で戦後、滋賀県の観光行政とも結びつく形で踊りや保存団体などに大きな変容があった、戦後の江州音頭の変容について研究を行い、成果を得た。また滋賀県長浜市で各地から観光客を集める長浜曳山祭についても、それまで周辺の農村部から人を呼ぶ形で執行されていた祭が、昭和30年代以降に地域住民によって担われる形で、新たに囃子保存会などが結成されていく中で地域の伝統的な祭りとして再編成されていくプロセスについて研究を行った。さらに山口県上関町祝島の祝島神舞についての調査も継続中であり、神舞についてのインタビューと共に、神舞以外も含めた地域の歴史的な文化遺産の保存と活用についても調査を行った。他に、柳田國男の民謡論をメディア論の立場から現代的な読み直しという視点を深化させる形でメディア論的な観点からの理論的な考察を行った。
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