本研究は、朝鮮戦争中、東西両陣営が、ラジオ放送を用いて、どのようにプロパガンダを行っていたのか。いわば「電波戦争」ともいえる朝鮮戦争の実態について、主として、アメリカによる朝鮮半島向けプロパガンダ・ラジオに着目して分析を試みようとするものである。 本年度は主として韓国と沖縄で史資料調査を実施し、ラジオ放送のみならず、テレビ放送や出版物などの他のマスメディアの状況にも目配りをしながら研究を行った。 まず韓国では、ソウルの外交史料館や国立中央図書館、国史編纂委員会において、韓国外交文書や米国務省、JCS、USIAなどのアメリカの文書、さらに北朝鮮文書の閲覧、収集を行った。アメリカでは、国立公文書館にて、国務省を初めとするアメリカ政府や軍関連の文書を幅広く収集した。 国内外で収集した史料を活用し、1940年代後半から朝鮮戦争を挟んで1960年代にいたるまでのアメリカ、韓国や北朝鮮のメディア情報政策とその実践についての分析をすすめた。これらの成果は、日本ではマス・コミュニケーション学会、韓国では放送学会などの学会、シンポジウム、そしてアメリカでの各種セミナーや研究会などで公表した。また、論文などの活字による成果公表は、日本語と韓国語で行った。 今後は、日本語や韓国語のみならず、英語での成果公表を積極的に行っていくことで、研究の国際発信力をさらに強化していきたいと考えている。
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