敗戦から1940年代後半にかけての大宅壮一について丹念な文献調査を行い、その結果、従来信じられてきた通説に大きな誤りがあることを発見した。この知見について、早稲田大学20世紀メディア研究所主催のシンポジウムで報告した。そして上記の通説を修正し占領期の大宅の活動に考察を加えた論文を、同研究所発行の学術雑誌において発表した。 それとともに、1950年代における大宅の活動を当時の雑誌ジャーナリズム全般に位置づける基盤を本年度整地した。具体的には、雑誌『平凡』『世界』を対置し、60年安保闘争時の両誌を比較検討することで、1950年代当時の主要な雑誌の位置関係について考察した論考を発表した。 これらの作業の一方で、雑誌ジャーナリズムにおける大宅の活動の特質の一端を明らかにするべく、大宅壮一のレトリックについても検討し、国際日本文化研究センターにおいて口頭発表を行った。 また現在の出版産業の状況についても、今年度刊行の単行本のなかで紹介した。 以上のほか、大宅壮一の活動についてわかりやすくまとめた文章を世界思想社のPR誌に寄稿した(「大宅壮一における多様性について」『世界思想』第37号、2010年)。本研究で得た知見をもとに関連書籍の書評を『週刊読書人』に執筆した(2010年4月9日号、8月20日号)。このジャーナリズム研究をいかし、『宮崎日日新聞』の「紙面診断」欄に寄稿した(2010年6月6日付、10月3日付、2011年2月6日付)。
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