本研究では、タンザニアを事例に途上国のEcotourism (ET)を研究・調査対象としている。研究目的は「今後の「持続可能な発展」戦略としてのETの可能性を検討する事」である。そのため、(1)観光の担い手としての地域住民とNGOに焦点を当て、個人及び地域社会の利益享受と社会参画の実情を把握する事で、社会開発手法としてのETの貢献可能性を検討し、(2)ETの実質的な担い手である「地域住民」の多様な属性を細分化し、実質的な役割や各属性のニーズの経年変化を把握する事に努めた。 国内作業では(1)文献調査による観光動向・開発等の各関連分野の既存研究の到達点確認、(2)22年度実施の調査結果の解析を中心とした。22年度の現地調査内容は以下の通り。 1.現地調査の実施:聞き取り調査・質問票を用いた半構造化インタビューの実施<2010年8月及び2011年2月> ◆調査対象者:ET実施地域内外の関連観光業従事者、人材育成担当者、各支援団体(対象NGO:WWF、TACTO、SNV Tanzania等)、地域住民、政府関係者等 ◆調査内容:住民の属性・階層による利益享受に関する現状の把握/ET関連業務としての社会参画の有無、希望の確認/運営形態毎のETを通じた住民の社会参画の程度差の把握 2.調査対象地の選定及び適正検証 上記の研究・調査を通じ、単なる観光振興ではなく途上国の開発支援の施策としての意味合いも併せ持つETによる経済・社会的利益の実態を把握することが可能となる。短期的な変化でなく長期にわたる経年変化を追うことで、SSA諸国に対する援助施策の一つとして、より具体性を持った提言を行えることから、本研究は重要かつ有益と言える。 なお、平成22年度の調査結果は23年度の成果と合わせ、順次発表していく予定である。
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