人々の社会的ネットワークを測定するために、ネーム・ジェネレータ、地位ジェネレータ、貧源ジェネレータなどの方法がある。簡便で効率の良いことから、地位ジェネレータや資源ジェネレータが頻繁に使われるようになってきたが、質問項目・選択肢についての基準が国内外で特に存在せず、測定の仕方はまちまちとなっている。 このため、ファインディングスの一致・不一致については慎重に検討をする必要がある。本研究では、同一の質問項目・選択肢を繰り返し用いてきた調査データを用いることにより、このような測定において生じる問題に対処する。また、複数地域における調査データを用いることにより、測定の地域差、諸変数の効果の地域差について検討を行う。このために、大阪府吹田市、群馬県桐生市、東京都府中市、東京都世田谷区に加え、新たに東京都足立区における調査データの整備作業を行ってきた。 これら従来の指標の分析に加えて、郵送調査の返信封筒に対する「御中」の記入有無を一つの変数として取り上げ、調べる分析を新たに試みた。返信封筒は回収後通常破棄され、「御中」の記入有無は分析の対象として取り上げられることがない。しかし、回答者の敬語の用い方、丁寧な姿勢・対応の表れと捉えると、BernsteinやBourdieuでの言語や文化資本の階層差や、社会関係の持ち方、社会的ネットワークのあり方と関連づけて考えることができる。分析の結果、都市度が高く、学歴が高いほど、そして男性より女性の方が「御中」と記入する傾向が見られた。また、「御中」記入者においては無回答が少なく、丁寧に回答をしている傾向も見られ、調査票記入の信頼性についても示唆が得られた(第38回行動計量学会大会にて発表)。
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