近年、社会関係資本やソーシャルキャピタルが脚光を浴び、また、無縁社会という言葉も一時期注目され、社会関係や社会的ネットワークに関する研究が重要となってきていると言える。理論的にも、実証的にも、応用研究において、社会的ネットワークの重要性が増してきているが、その測定や方法論といった基礎的な課題については、より慎重な検討が必要となっている。そこで、都市度や地域の違いを考慮しながら、社会的ネットワークについて地域比較分析を進めた。本研究では、桐生市、吹田市、世田谷区、府中市、足立区などのこれまでの郵送地域調査に加え、中央区にて同様の調査を実施し、調査作業を行い、地域調査データのマージ作業を進めた。地域データにはそれぞれ特徴があり、地域の人口規模の違いや回収率の違い等の問題があるため、地域比較分析については、慎重な検討や準備を進めている。また、社会的ネットワークの測定にあたり、多母集団解析を行っている。その結果、重要な指標については、地域にかかわらず、比較的に安定して測定が出来ていることを確認している。ただし、サンプル数が多くなり、比較する地域も増えてきたため、分析モデルについてはより改善が必要であり、今後も慎重に検討を進めたい。また、SSMなどの大規模な全国調査では、いくつかの重要な項目が測定されている。質の高い全国調査データと、カスタマイズが柔軟な地域調査データを組み合わせ、様々な角度からネットワーク指標を比較し、詳細な比較と結果の一般性についての検討を進めている。
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