平成23年度は、『昭和49年 全国山林原野入会林野慣行調査資料』に記載された入会林野を対象に潜在クラス分析を行い、当時の入会林野の管理形態が、集落直轄(68.3%)・権利流通形型(16.4%)・半私有型(9.4%)・古典的利用型(5.8%)、という4つの類型に分類できることを明らかにした。この結果をうけて、平成24年度は、入会林野の管理形態の違いを説明する要因の解明を試みた。主な知見は以下のとおりである。1.入会林野の利用規模が大きく、また、人口成長率が高い地域ほど、入会林野の管理形態は集落直轄型になりやすい。2.入会林野の利用規模が小さく、住民の異質性が高いものの、農業従事者比率が高い地域では、管理形態は権利流通型になりやすい。3.高齢化が進んでいる地域ほど、管理形態は半私有化型になりやすい。4.入会林野の利用規模が大きい地域ほど、管理形態は古典的利用型になりやすい。5.入会林野の管理形態は地域差が大きい。集落直轄型は他の地域に比べ、近畿地方に多い。権利流通型は他の地域に比べ、関東地方に多い。半私有化型は他の地域に比べ、中国・四国地方に多い。古典的利用型は他の地域に比べ、北海道・東北地方に多い。 平成22~24年度に得られた知見をもとに、次のような理論的考察も行った。(1)多くの数理社会学的研究は古典的利用型を想定してコモンズの数理モデルを構築していたが、昭和49年当時の入会林野でこの想定を満たすものは少数派であり、新たなモデル化が必要である。(2)権利流通型の入会林野管理は、従来のコモンズ研究ではあまり着目されていないものであるが、集落外の住民も含めたコモンズ利用を可能にする点で着目すべきものである。(3)近代化にともなう人口変動や産業構成の変化は、コモンズの管理形態に大きな変化をもたらす可能性がある。 これらの知見は第5回日米数理社会学合同会議で報告した。
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