地域社会の「研究」にとどまらず、申請者自らと指導学生が地域社会の諸ファクターのエンパワーメントに関わり、ソーシャル・ネットワークの1ファクターとなってきた。また、社会学教育としての社会調査の側面においては、質的調査法の有効性、限界、困難を、映像記録、卒業後の進路などの追跡データを分析、考察し、提示することで、社会学教育への提言を行う。昨年度は、継続調査の影響により、棗地区の住民自らが、地域が持つ資源の活用法を提示し、地域住民の凝集性を高める営みを行うようになってきた。お寺という住民が集っていた場を活用したレゲエライブとキャンドルアートの実施などを行った。越廼地区は、学生の手による地域イベント企画を離れ、住民が自らが地域の凝集性を高める営みを行う段階に入っている。昨年度も前年度と引き続き、社会調査の展開に資することを目的とした調査、分析を継続した。 また昨年度は、東日本大震災を受けて、調査対象地域にとどまらず、被災地後方支援という形で、社会調査教育の効果を傍証する事例が現れた。本調査に継続して参加した学生が呼びかけ人となり、昨年3月13日に東日本大震災救援物資募集を行い、地域のNPOと協働し、宮城県石巻市に送るなどの社会貢献活動が行われた。その後も、棗地区においても震災追悼の意を込めた企画を行い、一方では、県内NPOなどと連携しての震災復興支援を継続している。本研究に参加してきた学生(卒業生も含む)は、他の学生に比べ、地域の諸機関、いいかえればソーシャル・ネットワークのファクターとの結びつきや協働体制の構築、および非常時の対応に長けている側面が、少しずつではあるが浮かび上がってきている。これらの点を踏まえ、平成22年度の研究開始時には含まれていなかった分析軸も加え、社会調査兼アクション・リサーチの結果を報告書としてまとめる。
|