本研究では、男性介護者への支援プログラムの開発にかかわって、主に以下の3点について研究を実施した。第一に、男性介護者と支援者の全国ネットワークでの取り組みと連動して、男性介護者の当事者グループの実体を把握すべく、当事者の組織化の実態の把握と、その活動についての調査を行った。2006年の段階では全国に3団体しか存在しなかった男性介護者の当事者組織・つどいは、2013年には全国で90団体以上存在していることが分かった。その組織化も、当事者主導の組織だけではなく、社協、自治体の男女共同参画課、地域包括支援センターなど、多様なアクターが主導した組織があることが明らかになった。今後、具体的な活動内容や課題などを詳細に追跡調査する予定である。第二に、男性介護者の多くが直面する介護と仕事との両立に関する課題を明らかにするための介護者および企業調査を行った。介護離職が社会問題化するなか、仕事を継続している介護者、転職した介護者、離職した介護者をグループ化し、それぞれインタビュー調査を行い、企業による支援のほかに、家族支援、社会資源、地域による支援が重要であることを明らかにした。男性のみならず、家族介護者の生活において、仕事の継続は、経済的基盤としてだけではなく、介護者自身の人間関係や将来への見通しとつながる精神的安定のためにも、きわめて重要な要因であることが明らかになった。企業に対する調査では、ワークライフバランス支援を子育て支援に特化している企業がほとんどであり、社員がかかえる介護ニーズを把握し支援する体制が不十分であることが明らかになった。今後の超高齢社会に備えた社員の介護ニーズへの対応が、企業としてもきわめて重要な課題となると思われる。
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