本研究の目的は、ダイアド集積型の家族調査データを活用することで、現代日本における成人親子の世代間関係の趨勢を捉えなおすことである。ダイアド集積型の家族調査とは、家族・親族内の複数の二者関係(ダイアド)を並行的に測定する計量的調査であり、その複層的な情報を活用することで、世代間関係の変動をより適切に把握・説明できる。具体的には、1)欧米で広まっているマルチレベル分析をベースに、世代間同居の多い日本の状況を勘案した方法論的発展を図ること、2)ダイアド集積型の公開調査データの分析により近年の世代間関係のトレンドを記述すること、3)補填的な郵送調査を行うことで分析の解釈に必要な前提の妥当性を検証すること、の3点を目指す。 1年目の平成22年度は、ダイアド集積型の家族調査を用いた世代間関係の分析について、マルチレベル分析の応用を中心とした文献レビューを行いながら、マルチレベル分析に対応した統計分析ソフトを用いて公開データである全国家族調査NFRJ (National Family Research of Japan)の分析を行った。分析の結果は、NFRJ関係の研究会で7月と12月の2度口頭で報告をした。個人レベルの分析と比べてダイアドレベルの分析が確実に精緻な情報を得られることを示し、関係研究者と分析結果の妥当性について議論を行った。また、方法論的な視点からの問題点や発展の可能性についての考察を行い、第50回数理社会学会大会で報告を行った。日本の世代間関係をダイアドレベルで分析するためには、同居親子と別居親子を同時に分析することが重要となり、潜在変数を組み込んだモデルが有効である可能性等を示した。
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