本研究では、1990年代以降の社会変動期のロシアの若年層をとりまく状況と意識の変化についての調査・考察を行った。 第1に、ロシアの大学生の就職活動についての情報、例えば、大学生の労働市場、仕事に対する意識、若い専門家の地位、人材の流出、高等教育の役割の変化などについての情報を収集し、研究した。ウラジオストクやモスクワの大学機関による、学生への就職活動支援についての調査結果の成果の一部として、『ユーラシア研究』では、若年労働市場の需要と供給のミスマッチが生じていることや、大学生がAPEC景気の恩恵を受けることができなかったことなどについて論じた。 第2には、ロシアを含め、グローバル化の最中に世界中で生じている、大学の役割や地位の変化についてフォローするため、日本のある大学を事例として、大学カリキュラムへの資格取得教育導入の意義と成果について研究した。『神戸国際大学経済文化研究所年報』では「とりあえず資格という気持ち」を「実際の学習行動」にうまく結びつけていくしくみづくりこそが重要であるという結果を導き出した。 第3には、ロシアの社会調査に関する研究成果の公開に取り組んだ。報告者がモスクワとウラジオストクで実施した調査研究結果を海外の研究者に公表するために、英文による論文を "Kobe International University Review" に執筆した。さらに、日本での研究成果の公開のために、ホームページ『ロシア社会への扉』を開設した。開設にはこぎつけたが、現在のところコンテンツは十分ではない。今後、ロシアの若年層をとりまく社会や意識を中心とした報告者自身の調査研究結果や、ロシアで実施された各種世論調査の結果などについて日本語で解説したコンテンツを、順次追加をしていく予定である。
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