本研究は3カ年の計画であり、本年度は1年目にあたる。本年度は、主に、以下の事項について、研究を進めた。 第1に、犯罪不安、質的研究方法、ジェンダー研究、都市研究、臨床心理学などについて、関連する先行研究を収集・整理し、本研究の質的研究手法に反映させるための検討を進めた。 第2に、若年女性の犯罪不安の実態把握のための予備的検討、防犯教育に対するニーズの焦点化などを目的として、実践的な見地から、以下の情報収集および議論を進めた。(1)高校教諭および大学院生の協力を得て、公立高校の3年生(21名)を対象とする防犯の実験授業の見学を行うとともに、生徒の犯罪不安や防犯行動などについて、基礎的な情報を収集した。(2)犯罪に関する若年者のリテラシーや防犯情報への接触状況、若年者への防犯情報の発信手法のあり方などに関して、主に教育学の見地から、高校教諭らと意見交換を行った。 これらの検討をふまえた上で、第3に、つきまといや声かけなどのヒヤリハット事案への遭遇経験、犯罪不安の状況や背景、防犯情報への接触、防犯のために講じている対策や行動などについて尋ねる質的調査を設計した。この安全・安心に関する質的調査は、犯罪不安と若年女性の社会生活との関係などについても、構造的に把握しようとする内容であった。 第4に、大都市圏およびその郊外地域に居住する若年女性を対象として、前述の安全・安心に関する質的調査を実施し、分析に向けた準備を進めた。
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