本研究は3カ年の計画であり、本年度は最終年度にあたる。本年度は主に以下について研究を進めた。 第1に、本研究におけるこれまでの成果をふまえ、犯罪被害やつきまといや声かけなどのヒヤリハット事案を把握するための方法を紹介するとともに、地区間で被害率や被害のパターンを比較・分析するための参考となるように、総説を執筆した(『自動車技術』掲載論文)。 第2に、本研究課題では、GIS(地理情報システム)を用いることによる、安全・安心に関する情報の提供手法に関する検討を、計画段階から視野に入れており、本年度はその検討の作業を進めた。具体的には、防犯ボランティアなどによるパトロールの経路と、パトロールの過程で見出された問題箇所の写真やコメントなどを組み合わせて地図化した上で、安全・安心に関する情報提供の実践面での可能性と課題について検討し、学会報告した(日本犯罪社会学会第39回大会)。 第3に、性別や年齢などの属性と犯罪不安との関わりについて検討を行い、第6回アジア地域セーフコミュニティ会議において成果発表した。本研究は、若年女性という被害脆弱層を対象としていることから、WHO(世界保健機関)による「セーフコミュニティ」(安全な地域づくり)の研究や取り組み活動の中で、犯罪問題の観点から、地域づくりの議論に対して貢献しうる。 第4に、前年度までに実施した、安全・安心に関する質的調査のデータの分析を進め、論文を投稿するための作業を進めている。本研究課題は今年度で終了するが、得られた研究知見をさらに整理して、論文や総説等で成果を広く共有できるように、メインデータであるこの第4の点と、第3の点を中心に、取りまとめを進める。
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