本研究の目的は、多胎育児の社会的脆弱性を明らかにし、社会的な支援の必要性が高いことを示すことである。この目的を達成するため今年度の研究を実施した。 主な成果は、多胎育児の特徴について保健師等の専門職や子育て支援関係者に伝達する90分間の講習プログラムの開発および実施である。昨年度より本格的に取り組んできた当事者による映像表現は「知ってほしい ふたごの子育て~ふたごと過ごすホントの日常~」として、15分半の作品にまとめられた。最終年度である本年度は、映像作品の上映を含む講習プログラムを開発し、近畿地方を中心に合計10箇所で提供をおこなった。プログラム開発は、専門職や関連職種に多胎育児支援の必要性について伝達するために不可欠である。同時に、映像作品製作に熱心に携わった当事者グループのメンバーからは「一方的に作品を配布するだけでなく反応を得たい、対話をしたい」という要請があった。このため、当事者が参画できるプログラム開発を実施した。具体的には、①多胎育児者が感じる違和感や孤立感が生まれる社会的要因について説明する講義部分、②映像作品上映、③学びの共有と明日からの支援活動への応用可能性についてのグループディスカッション、の3部構成とし、当事者グループのメンバーが自分たちのことばを使って担当することとした。 講習参加者から得たフィードバックは主として、ふたごについての思い込みがあることに気づいた、多胎育児の実際について想像できていなかった、今後の支援活動に活用したいといった講習の意図を反映したものだった。また、講座をさまざまなかたちで担当した当事者からは、自分たちの体験が他者に伝わるかたちに整形されることで多くの人々とつながることができたとの声がきかれた。講習プログラムは参加者に多胎育児支援の必要性を示すと同時に、当事者をエンパワーしたと考えられる。
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