前年度に引き続き、A県における母子自立支援員調査結果の集計・分析を行った。現在の母子自立支援員の職場環境、業務内容・業務量、各支援員や他職種の職員にとっての母子寡婦福祉資金貸付の位置付け、母子自立支援員が抱える悩みや仕事の難しさと、他方でのやりがい等が明らかになった。母子自立支援員の主な仕事の一つである、母子寡婦福祉資金貸付は、十数年以上の返済を伴う場合もあり、したがって、母子世帯への支援も長期にわたる。母子自立支援員の雇用において近年導入されつつある、いわゆる「雇い止め」は、こうした母子自立支援員の仕事内容の特徴(1件当たりの相談支援が長期にわたりやすい)故に、望ましい動きではないと考えられる。しかしながら、調査結果からは、母子自立支援員の間にもその評価に幅があることが明らかになった。すなわち、雇い止め導入以前から母子自立支援員として仕事をしてきた支援員は、雇い止めの結果として、相談員の変更が繰り返されることが相談者に不利益をもたらし得るというように、雇い止めを否定的に捉えたり、こうした動向に危機感を持つ傾向があった。一方で、雇い止め導入後に母子自立支援員の仕事を始めた相談員は、雇い止めとそれに伴う相談員の変更に特に問題はないと考える傾向が見られた。 また、本年度は香港バプテスト大学で開催された「ピーター・タウンゼントメモリアルレクチャー」に参加し、先方の研究者及び、講演者として招聘されていたルース・リスター氏(ラフバラ大学)と本研究に関するディスカッションを行った。 なお、生活福祉資金については、制度の大幅改編後の利用者の返済開始時期が本研究と重なった。調査を予定していたA県では、利用者支援の一環として独自に利用者の現況調査を実施した事もあり、同時に本研究の調査を行う事は時期的にも不適切であると判断し、今回は計画を見合わせた。
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