研究概要 |
本研究は,介護福祉士のキャリア形成の実態を把握することを目的とした。A県介護福祉士会に所属し介護福祉業務に従事する介護福祉士1083名を対象に,自記式質問紙を用いた調査を実施し566名から回答が得られた(回収率52.3%)。平均年齢は38.0±11.7歳(範囲19~72歳)であった。現職場での勤続年数は,1~5年未満33.0%,5~10年未満29.5%であった。1年間に勤務として参加した研修回数は,0回が154名(27.2%),1回が141名(24.9%),平均は1.8±2.8回であった。勤務以外で参加した研修の回数は,0回が205名(36.2%),1回が82名(14.5%),2回が78名(13.8%),平均は1.8±3.1回であった。勤務以外の研修へは参加が少ない現状が観察された。職場内研修の実施頻度は,月に1~4回程度が多く,初級・中級・上級と勤続年数やキャリアによりグルーピングし,研修委員会や教育委員会が主催する計画的な研修が行われている一方,研修体制が無いとの回答も散見された。また,外部講師を招いての研修,職場外研修に参加した職員が講師を務める伝達講習も実施されていた。職場内研修内容は,資格取得後年数により傾向に違いが見られ,経験が少ない群には介護技術や個別ケアといった基本的な技術の習得に向けた指導が行われていた。経験年数が向上するにつれ,困難ケースの事例検討,他専門職からの講義などが組み込まれていた。希望する研修内容を尋ねたところ,介護福祉士資格取得後1年未満群では,介護技術や職員のメンタルヘルスについて,1年以上5年未満群では,事例検討や新しい技術の習得が求められていた。5年以上10年未満群では,新人教育の方法や専門性について見極めたいといった意見があり,専門性の確立に向けた取り組みが意識されている現状が窺えた。10年以上群では,人事管理やキャリアアップの仕組みなど,当人のみならず職場全体の向上を図ろうとする意向が確認された。
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