これまでに, A県介護福祉士会会員を対象に調査を実施し,臨床技能の習得を中心とした職場内研修が実施されていることを把握した。今年度は,キャリア形成支援と職場定着に有用な研修内容や研修体制について検討することを目的とした。 まず,現在実施されている職場内研修について内容分析を行い,資格取得後年数により設定した初任者層(3年未満),中堅層①(3-5年),中堅層②(6-10年),管理・指導層(11年以上)の4群ならびに施設・在宅群の傾向を比較した。介護福祉士における職場内研修内容は,資格取得後年数により傾向に違いがみられた。施設群では経験年数が向上するにつれ高度な内容が提供されている一方,在宅機関の4割で階層別の研修は実施されておらず,施設群に比して中堅層②や管理・指導層に対する研修内容が希薄であることが把握された。介護福祉士には生涯研修制度が整備されており,職場内研修と職場外研修は相互補完しながらキャリア形成に役立てられるものである。倫理や法制度,家族や地域支援の視点,チームケアの展開,リーダーシップやマネジメント等については職場外研修により補足する必要性が示唆された。 次に,新任者に対する継続的な教育的配慮やサポートによるキャリア形成支援が職場定着を促進するとの先行研究を踏まえ,職場内研修体制と職務満足感および継続意向の関係を検討した。職場内研修体制(研修組織の有無,職能段階別の研修の実施,少人数・個別新人研修の実施)を外生変数とし、職務満足感を通じ継続意向に関係する逐次モデルを措定し,構造方程式モデリングにより検証したところ,少人数・個別新人研修の実施が有意な関係を示した。新任介護福祉士においては,研修の組織化や体系化もさることながら,少人数もしくは個別の体制で重点的に教育を行うことが,職務満足および仕事継続につながることが示唆された。
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