本年度は、昨年度に実施した量的研究(アンケート調査)の結果を踏まえ、大きく以下の2点を実施した。 第一に、研究成果の社会への発信である。具体的には、本研究の大きな枠組みのひとつである量的研究(アンケート調査)の結果について学会発表を行った。学会発表では、家族介護者の援助要請行動の促進・阻害要因に関する報告を行い、彼らの援助要請行動は、家族関係や地域社会との結びつき、介護や医療等に関する専門職との信頼関係により変化することを明らかにした。他方、男性家族介護者では、女性家族介護者と比較して、親族以外の近隣や知人等に対する援助要請行動が少なく、その中でも特に「息子」が介護者である場合、その傾向はより顕著なものとなり、さらに近隣や知人等からのサポートに対する満足度も低くなる傾向にあった。現在、本研究の成果発表として、上記とは別の視点から検討した論文を投稿している。 第二に、研究成果全般を整理するために調査報告書の作成を行った。具体的には、昨年度に実施した(1)家族介護者に対するアンケート調査、(2)介護支援専門員等の専門職に対する自由記述アンケート調査、の2つ量的研究(アンケート調査)の結果について、調査結果のとりまとめを行った。 以上の研究成果から、男性家族介護者を地域で支援するためには、当該地域におけるネットワークの構築はもちろんのこと、行政や自治体、専門職が主体となって直接的な支援を展開していく一方で、それを補完する形としての見守りや当事者同士の支援が求められることが示唆された。ただし、男性家族介護者を支援するにあたっては、必ずしも積極的な働きかけが有効であるとは限らないことから、介護者個々の特性に配慮した支援が必要である可能性が示唆された。
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