本年度は、文献研究の継続と、作成した保健医療福祉のネットワークをアセスメントする支援ツールの検証作業を行い、その結果を考察した。特に検証作業については、地域包括支援センターおよび医療機関、高齢者施設で直面している課題に着目して、調査対象者から事例を選出した。そして、支援ツールの結果をふまえて、事例の課題解決に向けた考察を現場の保健医療福祉の専門職とともに行った。 支援ツールの入力結果から、地域に社会資源(ネットワーク含む)がない場合、その状況に対する支援者の認識結果が表れていた。その上で、この社会資源がないことをどのように克服するか、その手立てを考える過程を分析することが、課題解決につながることを確認できた。 実践現場でも、利用者や地域のネットワークをアセスメントするために、ICT(情報通信技術)をどのように活用するか、試行錯誤しながら進められている現状があった。ICTの活用方法は多様であるし、どのように展開するかも多様である。 本研究では、ICTをソーシャルワーカーなど専門職が用いるアセスメントへ活用し、統合的なアセスメントを行う可能性を検討できたと考えている。単一のアセスメントシートでは、足りない情報があったり、あいまいな情報がある場合がある。そこですぐに利用者宅を訪問して、面接を行うという方法をとるのではなく、他機関が収集している情報で、役立つ情報があればICTを活用してその情報を収集するということができると考えられる。 2つめは、利用者理解への活用である。保健医療福祉の専門職としては、利用者のことを十分理解しているつもりであっても、支援関係が適切に構築できない、支援計画がうまくいかないがある場合には、再度、利用者ととも生活に関する情報を整理することが必要である。今回の支援ツールでは、この再確認作業に活用できると考えられる。
|