研究課題/領域番号 |
22730439
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
西梅 幸治 高知県立大学, 社会福祉学部, 講師 (00433392)
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キーワード | 社会福祉関係 |
研究概要 |
本年度については、テーマに関して理論と実践の両側面から、方法論確立に向けて継続的に検討を行った。具体的にまず理論的側面では、ソーシャルワーク理論に関する先行研究を整理し、その中心的な原理である生活・支援・過程の点から、ソーシャルワークにおけるエンパワメント実践の位置づけと基本特性を明らかにした。またその過程特性として、ストレングスを意識化すること、それを活かした行動変容による成長・変容を目標とすること、利用者とソーシャルワーカーが協働することの重要性を指摘することができた。 次に実践的側面では、この過程を推進し、実践に応用可能なツールの一つとしてコンピュータ支援ツールの開発と活用方法を検討した。具体的にはまず、障害者福祉(知的障害のある人の生活世界など)や質的調査法についての先行研究を整理した。それをふまえて、知的障害のある人の生活世界の構造やストレングスを明らかにするためにインタビューガイドを作成し、知的障害のある人への調査を継続的に実施している。この分析に基づき、支援ツールに導入する質問項目を検討することを、量的調査による信頼性・妥当性の確保を含めて今後検討していきたい。次に支援ツール開発に関しては、情報科学に関する先行研究や上記の調査研究とともに、エコシステム研究会への継続的な参加と、知的障害者関連施設職員などへの聞き取りを通じて、ツールを介した協働の方法について引き続き検討した。 以上を通じて、ストレングスやエンパワメントに基づくソーシャルワーク方法論を理論から実践までを見据えて構築していくことが可能となり、そこに本研究の意義があると考えられる。加えて、知的障害のある人の語りににづき実態に迫る支援ツールの開発を行い、かつ開発段階から当事者協働の機会をつくり出すことで、協働による方法論確立の意義を明確にしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソーシャルワーク方法論確立のためには、理論的枠組みの構築がまず求められるが、海外文献なども渉猟し検討しているため、時間がかかっているのが現状である。また支援ツール開発については、知的障害のある人に直接、インタビュー調査を実施しているため、了解を得るまでに時間がかかっていることが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後について、まず理論的側面では特に利用者との協働によるアセスメント過程に着目し、その展開技術や技法をふまえた協働アセスメント方法を理論的に構築していく(支援ツールの位置づけや活用方法の明確化を含む)。加えて知的障害のある人の生活状況を理解する質問項目の精緻化に向け、当事者へのインタビュー調査を継続的に実施する。そしてそれに基づいた調査票作成により、質問項目精緻化のためのアンケート調査実施の検討を行う。その量的調査では、心理尺度作成のための手順を参照し、支援ツールに導入する質問項目の信頼性と妥当性を検討する(妥当性検証についてはQOL26などの尺度を利用する)。なお量的調査が困難な場合は、仮の質問項目を導入したツール活用により、コンセンサスを得ていく方法で検証する。
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