本年度については、テーマに関して未消化部分を再考し、継続的に研究を積み重ねることで、理論と実践の両側面から、方法論確立に向けた分析・検討を行った。具体的にまず理論的側面では、ソーシャルワーク理論に関する先行研究を整理し、ソーシャルワークにおけるストレングス視点(強みへの着目)に基づく実践展開の考察を行った。そのなかでは、ストレングス視点の導入契機、概念の特性、アセスメントの特徴などを考察した。特にソーシャルワークにおいては、ストレングス視点がエンパワメント(利用者のもつ力)を促進することを明らかにしながら、利用者が生活を通して、ストレングスを自覚化していく自省過程の重要性を考察した。そしてその展開に向けて、利用者との協働による肯定的な意味を見出すための技法(解決志向やナラティヴアプローチなどを取り入れた対話など)の整理を行った。 次に実践的側面では、ストレングス視点から障害のある人のエンパワメント過程を推進するための技法を、実践場面で具体化するためのツールの一つとして、コンピュータ支援ツールの開発と活用方法を検討した。具体的にはまず、障害者福祉領域の先行研究から、知的障害のある人の生活世界や生活を支援するためのアセスメント指標、ストレングスを整理した。また一方で、知的障害のある人の語りからの生活状況を理解するためにインタビュー調査を継続的に実施した。これらの統合的分析に基づき、支援ツールに導入する質問項目を整理した。また支援ツール開発に関しては、エコシステム研究会への継続的な参加と、知的障害者関連施設職員などへの聞き取りを通じて、ツールを介した協働アセスメント方法について引き続き検討した。 以上を通じて、ストレングス視点に基づくソーシャルワーク方法論に関して、理論から実践までを見据えて、知的障害のある人参加を促進しながら構築してきたことに本研究の意義があると考えている。
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