本研究の目的は、平成20~21年度に科学研究費補助金若手研究(B)「認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラムの開発(課題番号:20730380)」を受けて開発した認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラムの有効性について科学的データに基づいて検証し、福祉現場にて実用可能なツールとなるよう改訂することである。 まず、認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラムを実践現場で行われているケアマネジメントのプロセスに組み込んで行く場合、どのような点が障壁になるか、という点について既存事例を用いて検討を行った。その結果、認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラム開発の際に想定した(1)アセスメントシートに基づくニーズ把握と在宅環境配慮の目標設定、(2)マニュアルに基づく具体的な在宅環境配慮の実施、(3)実施した在宅環境配慮の評価および課題の抽出、(4)フォローアップというプロセスについては、上記(1)~(4)までをすべて実施するというプログラム実施に限定するのではなく、プログラムの構成要素単体の活用など柔軟な運用が求められることが示された。 これを受け、東京都の介護支援専門員8名を対象に、認知症高齢者への在宅環境配慮実施時の具体的なプロセス、困難である点、必要であると思われるツール等について聞き取り調査を行った。その結果、住宅改修などの介護保険制度の項目には含まれない在宅環境配慮の実施の有無については、介護支援専門員の経験や認識などにより実施状況が異なることなどから、認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラムを在宅環境配慮の視点を学ぶ研修ツールとして活用可能であるという示唆が得られた。
|