本研究は、地域福祉研究者の現場へのコミットメントの内容を地域福祉の大学教育にどのように活用するかを検討するものである。地域福祉研究者のコミットメントの前提となるものとして、当該地域の地域福祉の現状を把握するアセスメントがある。アセスメントの内容に着目して研究者のインタビュー調査や事例調査を実施した。地域の主体性を重視する地域福祉において、アセスメントの重要なポイントは、地域のさまざまなアクターである。アクターとしての住民・社協職員・行政職員等が地域の課題にどのように向き合って取り組んでいるのか。個々の主体性にとどまらず、地域社会の関係性づくりとしてアクター間のチームづくりまで視野に入れた地域福祉の総合的なアセスメントが必要となる。具体的な内容として、地域福祉の主体に変わり得る地域のアクター、それをサポートするインキュベーションのようなもの、自治体の政策的な支援等が挙げられる。このような地域福祉のアセスメントには、地域の主体性を高めるプログラム性(=研究者の現場へのコミットメント)が伴われる。つまり、単なるアセスメントで終わるのではなく、地域福祉の主体形成にまでつながり得るのである。アセスメントのプロセス≒コミットメントのプロセスとなり、コミットメントのための技術・方法≒アセスメントの技術・方法につながる。研究者のアセスメントと同時にコミットメントが行われる場をメタ現場(実践と研究の中間領域として、実践者と研究者が分析的な作業を共有する場)と名付け、地域福祉のメタ現場の形成プロセスを研究者のコミットメントのプロセスと想定することを試みた(朴・平野2010)。今まで明確に提示されなかった地域福祉のアセスメントの内容をメタ現場での研究者のコミットメントのプロセスから具体化することによって、地域福祉を捉える視点を教育現場に明確に示すことができる。
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