2年間の研究計画の1年目である平成22年度は、2つの児童養護施設を対象としたインタビュー調査を実施した。対象者は、主として主任(リーダー)クラスの現場職員である。 本調査研究では、児童養護施設職員の「専門性」の形成・継承に焦点を当てている。「専門性」の形成・継承と「継続的就労」は相補的な関係にあるとする立場から、職員同士の現場における相互作用に着目している。職員同士および子どもとの継続的な相互作用のなかで、すなわち、「実践を共有する」なかで、職員の専門性は形成され、継承されていく、と同時にそのことが継続的就労を支えると考える。継続的就労において重要なことは、職員が孤立せず、自分の「居場所」があると感じられること(所属感)、児童養護施設職員としてのアイデンティティの形成を実感できる職場環境であることである。 調査の結果、ベテランの職員と若手職員との間、また、ベテランか若手かに限らず職員同士の間で意識の差が生じるいくつかの要因が明らかになった。 1、若手職員が子どもとのトラブルに直面した際に、ベテランが介入するタイミングに対する認識にズレがあること。そのことが、若手職員の孤立感、実践に対する不全感を助長する場合があること。 2、いくつかの職員集団が形成されケアが行われているが、職員が育つ集団とそれが困難である集団の違いは、業務内容や分担、責任の所在の明確化について、一定程度のシステムが確立されているか否かに関連していること。 3、ベテラン、若手職員に限らず、ケアに対する理念や方法、様々な情報に対して、職員はお互いに「共有できているはず」との認識をもっているのだが、実際にはズレがあり、それに気づいていないことがあること。また、職員間で「共有すべきもの」の中身が何であるかに対するズレがあること。 上記の点をふまえ、今後は、施設形態という視点を導入し、職員の相互作用について考察を深めたい。
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