本調査研究は、児童養護施設職員の「専門性」の形成・継承に焦点を当て、それを支える職場環境のあり方について考察を行うことを目的としている。「専門性」の形成・継承には、「実践の共有」、すなわち、職員同士および職場環境における相互作用を保障することが求められる。職員の「専門性」の形成・継承について職場環境という観点からの捉え直しを行う際には、以下の2点を考慮に入れる必要性が、施設職員を対象としたインタビュー調査から明らかになった。 1、「職場環境」が職員の「専門性」を育む場としての機能を備えていること。 2、それと同時に、職員の「意識変容」に働きかける仕組みづくりの構築が必要であること。 1、については、これまでのインタビュー調査から、職場への所属感の形成を支える職員集団づくりを意図的に行う必要があること、それを前提として、「専門性」の形成・継承のための働きかけを行うことが求められていることを確認することができた。所属感は、入職動機のみでは形成が難しく、職員との相互作用の積み重ねによって形成される。これは、「働きつづけたい」という就労継続に対する動機づけにも影響を与えていることが示唆された。 2、は、調査プロセスの中で新たに発見された課題である。この点については、今後の継続的調査によって、明らかにすることが必要である。 これまで、社会福祉の現場では、離職問題や人材育成における課題を抱え、それが喫緊の課題であるという認識をもちながらも、そのことに対する具体的な方策については、開発途上と言わざるを得ない。特に、人材育成や施設内研修等の企画・立案において、その教育効果や検証の方法等をふまえた実践が積み重ねられているとは言い難い状況があると考える。本調査研究では、職場環境における相互作用という観点から、上記2点の視点をいれた人材育成や施設内研修等のあり方を考えて行く点に意義があると考えている。
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