高齢者福祉施設において、良質なサービスの提供につながる介護職員の労働環境のあり方を検討することの重要性が指摘されてきた。しかし、労働環境とサービスの質の関連について実証的な検討を試みた先行研究は非常に少ない。そこで、前年度(平成24年2~3月)に大阪府下のすべての特別養護老人ホームの介護職員(1施設あたり3名)を対象に「労働環境に対する認識」、またサービスの質の評価指標として設定した「サービスの質の自己評価」「利用者満足度に対する認識」を把握するために自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した。 24年度は、当調査で得られたデータを用いて、介護職員の「労働環境に対する認識」の各下位領域が「サービスの質の自己評価」および「利用者満足度に対する認識」に及ぼす影響の大きさを検討するために統計解析を行った。その結果、「サービスの質の自己評価」に対して「教育・研修体制」および「同僚からのサポート」、「利用者満足度に対する認識」に対して「専門性の認知」「上司からのサポート」「教育・研修体制」がそれぞれ有意に関連していた。これらの解析結果から、特に「教育・研修体制」のあり方がサービスの質の重要な影響要因であることが示唆された。 そこで、これらの実証的な知見をもとにサービスの質の向上につながる「教育・研修体制」のあり方を検討するために、事前に調査協力が得られた特別養護老人ホーム(2施設)の介護職員を対象に半構造化面接法による聞き取り調査を行った。その結果、教育・研修の実施回数や参加機会とともに、その内容として個別ケアに関する考え方や技法について学ぶことの重要性が指摘された。このことから、「パーソン・センタード・ケア」についてイギリスの文献や資料等を収集して概念整理を行うとともに、「パーソン・センタード・ケア」を教育・研修プログラムに位置づけることの重要性を提唱した。
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