平成22年度は、以下の3つの調査を実施した。 【1】地方都市における高齢者のペット飼育支援をめぐる語りの収集 2010年6月~9月に、延岡市において、飼育経験者(介護保険サービス利用者:女性4名)、支援者(福祉職員2名、ペットシッター1名)、行政職員(市職員2名、保健所職員2名)に対して半構造化面接を実施した。調査の結果、ペットは、飼育者の心理的・社会的なサポート資源となっていることが示唆されるとともに、飼育者との関係はペットとの死別後も継続し、飼育者のライフストーリー再構築に影響を与えていることが示された。一方、支援者・行政ともに、高齢者のペット飼育のメリットを認めつつも、ペット飼育をめぐる「問題」を「困難事例」「家族の問題」と見なすドミナントストーリーを示し、支援のためのネットワーク構築の困難さが示唆された。 【2】都市部における高齢者のペット飼育支援をめぐる語りの収集 2010年10月に、横浜市において、飼育経験者(介護保険サービス利用者:男性1名)、支援者て福祉職員1名)に対して半構造化面接を実施した。調査の結果、ペットが飼育者のライフストーリー構築過程に様々な影響を与えていることが示された。一方、支援者への聞き取りから、困難事例への対応経験が多い都市部でも、支援のためのネットワーク構築が十分ではないことが示唆された。 【3】支援のためのネットワーク作りに向けた「対話」の場の試行 2011年2月に、横浜市内で『地域猫』活動に関与する実践家らと協働し、高齢者のペット飼育に関わる関係者(獣医師・動物看護師・動物関係ボランティア・行政職員・福祉職員等)に対して参加型ワークショップを試行した。その結果、高齢者のペット飼育をめぐる「問題」に関するオルタナティヴ・ストーリーの生成に、(1)異業種が混在する場の設定、(2)各自の立場に基づく語り生成の促進、の2点が有効であることが示唆された。
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