研究概要 |
今年度は,主にM-GTAを用いた分析作業と追加データの収集を行った.分析作業の途中でスーパービジョンの機会を設け,助言を受けた際,概念の信憑性の確保のため,追加データの収集は昨年度調査を実施したB機関とは別地区で地域生活支援活動を行っている機関・事業所等での調査の必要性が示唆された.このため,地区の異なる2機関へ調査依頼を行い,5年以上の福祉的就労の経験を有する3名(男性2名,女性1名)の調査対象者に対して,働くことを通して自分自身に起こった変化,障害を持ちながら働く感覚をどのように掴んだか等についてのインタビューを実施した.今年度の概要は以下の通りである. 5~7月:概念を創る際の分析ワークシート(内容:概念名・定義・具体例・理論的メモ)を作成した.分析結果全体についてのアイディア等は理論メモに記録した. 8~9月:分析作業を進め,分析スーパービジョンの機会を設け,必要な助言・指導を受けた.多面的な検討を行い,この時点で概念が61となった. 10~1月C機関,D機関へ調査依頼を実施した.調査依頼の際に窓口となる各機関の施設長及び施設職員へ電話・E-MAILで調査の概要を説明し,研究計画を事前に郵送した.その後,文書及び口頭にて調査依頼を実施した.内諾を得た後,2機関に対しては遠方のため電話・E-MAILで調査日時・場所,研究対象者,調査の留意点等を確認した.また,調査・分析に係る物品(プリンターインク等)を購入した. 1~2月:調査対象者の都合・体調に合わせ日時・場所を設定し,倫理的配慮に関して説明し,同意を得た上で調査を実施した(C機関:1/20調査対象者G,2/3調査対象者H,D機関:2/27調査対象者I). 3月:逐語記録の作成,分析ワークシートの作成,内容の修正等により概念の生成を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,精神障害者の福祉的就労における主体性の獲得の過程とその要因を明らかにすることを目的としている.現在,概念間の関係やまとまりからカテゴリーを生成し,それらの関係を図式化する作業を行っている.分析ワークシートを参考に結果図案を書き,ワークシートの内容を見比べ,必要な箇所の修正を繰り返し行っている.現時点では部分的な動きは明らかになってきているが,全体の動きやコアとなる概念が見えにくく,加筆・修正作業が必要な状況にある.このため,以上の区分とした.
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画していた地域生活支援活動を行うA団体における調査が難しくなったために計画の一部を見直し,複数の別な機関で調査を実施したことにより,調査に係る時間が増加した.さらに通常の業務が増加したことも影響し,分析作業に遅れが生じた.このため,作業の時間の確保するためにできるだけ通常の業務を調整する,分析に関して助言が必要になった際は適宜スーパービジョンの機会を設ける等の対応策により,今年度の計画に沿って作業を遂行し,研究発表ができるよう努める.
|