現在、財政的制約や人的資源の不足、硬直的な運用等の問題から、障害者の生活課題を解決する上で、公的福祉サービスなどのフォーマルなサポートと併せて、ボランティア、友人、地域住民、などによる非制度的なインフォーマルサポートの活用が注目されている。本研究の目的は、重度身体障害者の主体的な地域生活を支えるインフォーマルなサポートの内容と提供方法を明らかにし、そうしたサポートがより多数の障害者に安定的に提供されるための地域生活支援システムを提案することにある。 本年度は、昨年度に引き続き重度身体障害者の地域生活の実像とインフォーマルサポートの受領実態を把握するために重度身体障害者5名(脳性マヒ3名、頸髄損傷1名、他1名)に対して、1週間の生活記録調査と聞き取り調査を実施した。併せて、地域生活支援ネットワークの形成方法を明らかにするために3地域を対象とした文献調査、福祉活動団体などへの聞き取り調査、参与観察などを実施した。 調査の結果から、1)公的介助サービスは、重度身体障害者の地域生活や社会参加に対して大きな役割を担っているが、その不足をボランティアの活用や場合や近隣住民の自発的支援により補っている場合があること、2)外出の際、都市部では公共交通機関が、地方では自動車(自家用車や個別輸送サービス)が重度身体障害者の重要な移動手段となっていること、3)重度身体障害者を取り巻く家族外の人間関係として主に、職場での日常的関係、障害者同士の情緒的支援関係、社会的役割を担う中での一般の人との関係などがあり、また介助者と二人で過ごす時間が多い場合もあること、4)住民による地域活動と障害当事者による活動が盛んな地域では、障害者が健常者に近づくのではなく障害者のままで暮らすという価値観を共有し、支え合うネットワークが形成されていること、などが示唆された。
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