本年度の研究成果 大学ソーシャルワーカー(以下CSWとする)を配置した大学について、総合的な学生支援体制と連携システムを把握し、共通する特徴と各大学独自の工夫を明確化するため、CSWはどのような業務役割を担っているのか明らかにすることを目的とした。 まず、日本学生支援機構の既存のデータベースや、学校ソーシャルワーク学会、社会福祉学会、全国大学保健管理研究集会等の関連雑誌の報告集に掲載された先行研究の分析を通じて、学生支援においてソーシャルワーク機能を充実させた大学に関する取り組み内容について検討した。その結果、CSWを設置している大学が不明確なことが明らかとなった。そこで、全国の大学に対し、CSW配置の有無と、大学の概要、CSWを配置していない理由、配置している場合のその業務役割等を質問紙により調査した。対象は全国の730の大学とし、調査票を送付し、学生支援担当部署に回答を求めた。430大学(回収率58.9%)から回答を得られた。CSWを配置している大学は32大学であった。CSWの業務としては学生や家族に対するケースワーク(22/32:68.8%)、精神障害を有する学生への支援(20/32:62.5%)、発達障害(または疑い)を有する学生への支援(19/32:59.4%)、アウトリーチ活動(13/32:40.6%)、教職員へのコンサルテーション(13/32:40.6%)等が多く挙げられた。また、CSW配置の効果として、アウトリーチ活動、学内外の機関との連携充実、ピアサポートの充実、多職種支援チームの学生支援充実等の効果が挙げられる一方、予算の不足から業務過多となり、周囲との連携がさらに課題となったり、CSWの認知度が低く、CSWが自ら効果を広報していく必要性が指摘されていた。今後ヒアリング調査によりソーシャルワーク機能を充実させた大学の学生支援体制の実態について明らかにし、その業務内容を統一して手法で評価していく予定である。
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